令和1年度 全日本同和会 活動方針

 全日本同和会は日本国憲法の精神に則り昭和35年の結成以来、昭和、平成と約60年間網領、規約、規則を厳守し、同和問題の完全解決を目標に運動を展開してきた。

 新元号令和元年を迎え、今後も全国各地に於いて研修会を開催実施し、広く国民は元より会員の方々に崇高な同和問題の理解と問題解決の努力を求める。

 「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。

 これを未解決に放置することは断じて許されないことであり、その早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である」と同和対策審議会は答申し、国はこの答申に則って昭和44年、ようやく同和対策事業特別措置法を制定し、以来、今日まで6度の立法処置がとられ、半世紀の間、同和関係者に対象を限定した特別対策を実施してきた。こうした特別措置法に基づく施策の推進は、同和地区対象者の幾世代にもわたる悲願であった部落差別の解消を進め、成果をもたらした。

 国は、同和問題の解決に向けた新たな取り組みの推進のため、平成28年12月16日に「部落差別の解消の推進に関する法律」を施行した。

 この法律は、「現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ、全ての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題である」と示すとともに部落差別の解消に関し、基本理念、国及び地方公共団体の責務を明らかにし、相談体制の充実、教育及び啓発の推進、部落差別の実態に係る調査といった具体的施策について定めている。

 近年では、インターネットの匿名性を悪用した特定の個人を誹謗中傷する人権侵害や、「いじめ」による児童生徒の自殺、病院や養護施設における高齢者への虐待などが深刻な社会問題となっており、大人、子供を問わず、私たちのごく身近な生活の中で人権侵害が起こりうる状況となっている。

 また、全国各地でヘイトスピーチが繰り返し行われるなど、新たな差別事象が発生しており、これに対しても国は「ヘイトスピーチ解消法」を施行し、障害者に対しても「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」を盛り込んだ「障害者差別解消法」も施行され、すべての人がお互いに理解しあっていく「共生社会」の実現に向けて取り組みが進んでいる。

 21世紀は人権の世紀と言われている。人権の尊重が平和の基礎であるという共通認識の下、人権が尊重される社会の確立に向け様々な取り組みが進められたにも関わらず、依然として社会生活のあらゆる局面で、同和問題をはじめとしたさまざまな人権問題が存在しており、これらの差別意識を解消するには、これまでの同和教育や啓発活動で積み上げてきた成果と反省にたって、すべての人の人権を尊重していくための人権教育、人権啓発を再構築していかなければならない。

 全日本同和会は昭和35年の結成以来、「対話と強調」により、国民の理解と合意を得て、今日まで「子らにはさせまい この思い」をスローガンに運動を推進してきた。近年では人権問題に関して、生命、身体の安全に係わる事象や社会的身分、門地、人権、民族、信条、性別、障がい等による不当な差別その他の人権侵害がなお存在している。

 また我が国社会の国際化、情報化、高齢化等の進展に伴って人権に関する新たな課題も生じてきている。特に最近、児童に対しての虐待は日々急激に増加し、連日のようにテレビニュースで報じられ、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待等々、子供達の人権が侵され、社会意識が問題化されている現状である。

 全日本同和会の重大なスローガンの一つである「子らにはさせまい この思い」の表現の通り、親が子を思う人間愛を基調とし愛情深く子供達の人権を守る運動を再構築していくことを願い、今後も強力な運動を全国各地において推進していく。

具体的には

  • 人権問題を学習する場合、それぞれがもつ固有の問題と課題に合わせて、同和問題の早期完全解決を内容とする啓発・教育の推進を求める。
  • 経済基盤の確立には活発なる就労対策、中小企業、零細経営者の救済を求める。
  • 行政機関の主体性の確立と中立公正な施策の推進を求める。
  • 同和問題の根絶を期するため、優れた資質をもった指導者の養成と確保をはかる。
  • 部落差別解消推進法(理念法)の充実を求める。
  • 児童虐待の防止等に全力で運動の推進を求める。

以上の通り、活動の方針を定め同和問題完全解決を目標に活動を展開する。